分担者: 韓先花(立命館大学情報理工学部研究員)
田中弘美(立命館大学情報理工学部教授)
佐藤嘉伸(大阪大学医学部准教授)
古川顕(首都大学東京教授)
森川茂廣(滋賀医科大学教授)
健山智子(立命館大学情報理工学部助手)
段桂芳(立命館大学情報理工学部研究員)
・研究目的:
本研究は、我々の先行研究で開発した一般化N次元主成分分析(GND-PCA)を拡張させ、
新たな一般化N次元スパースコーディング法(Generalized N-Dimensional Sparse Coding: GND-SC)
を開発し、腹部の複数実質臓器統計ボリュームモデルの構築を目的とする。GND-SC法において、
医用ボリュームデータをテンソル基底のスパースな線形結合として表現できる(スパースコーディング)。
結合係数のスパース性の制約により、腹部ボリュームデータの中に混在する特徴的なパターンが個々の基底と
なって表出されるので、各臓器特有の病気に寄与する成分(基底)の特定や診断支援への応用が期待される。
なお、本提案書での統計ボリュームモデルとは、形状のバリエーションとテクスチャ(濃淡分布)
のバリエーションを統一的に記述できる統計アトラスを指す。
・研究の概念図:
本プロジェクトでは、我々が多重線形理論の枠組で開発した一般化N次元PCA[3,30]を発展させ、新たに一般化N次元スパースコーディング法(GND-SC)
を開発し、腹部の複数臓器統計ボリュームモデルを構築する。その概念図を図1に示す。学習されたスパースな基底
はそれぞれの単独な臓器のバリエーションと臓器間のクロスバリエーションを表すことになる。
図1 一般化N次元スパースコーディングによる腹部の複数実質臓器の統計アトラスの概念図
・研究の流れ: 1. 一般化N次元スパースコーディングの開発:
スパースコーディングは、主成分分析などの統計解析手法と同様,個々の基底が観測データを構成
する基本要素成分となるように学習することが目的となるが、殆どの基底の係数は0 であり、
ほんの一部の基底の係数だけが大きな値をもつ。結合係数のスパース性の制約により,観測データの
中に混在する特徴的なパターンが個々の基底となって表出される特徴がある。 図2 GND-SCの概念図
2. GND-SCによる医用ボリュームデータの統計ボリュームモデリング:
本プロジェクトでは,腹部の複数実質臓器(肝臓、脾臓、腎臓、胃など)の統計ボリュームモデルの構築し、
その診断支援への応用を目的としているので、各実質臓器の形状及びテクスチャ(濃淡分布)
の変化を同時に解析する必要がある.本研究では,図4に示すように、まず形状とテクスチャ(濃淡分布)
を分けてそれぞれの統計モデルを求め、それから二つを統合し、統計ボリューム(アピアランス)モデルを構築する.
図3 腹部の複数実質臓器の統計ボリュームモデルの構築
・関連研究発表:
我々の先行研究で,多次元データをテンソルとして取り扱い,ベクトルに展開する必要がなくそのまま
統計解析できる,一般化N次元主成分分析法(GND-PCA)
を開発し,少数サンプルからも汎化能力をもつ統計モデリングができるようにした.
本研究では、先行研究で開発したGND-PCAを基盤に、新たに一般化N次元スパースコーディング
法(GND-SC: Generalized N-Dimensional Sparse Coding)を開発し、腹部複数臓器の統計ボリュームモデル
を構築する。そのイメージ図を図2に示す。