画像処理による顔面神経麻痺度合いの定量評価
顔面神経麻痺とは顔の表情筋の左右どちらか片側が麻痺してしまい,動かなくなる病気です.
この病気は後遺症が残る可能性があることから,麻痺度合いに応じた早期治療が必要とされています.
従来,麻痺度合いの評価手法として柳原法[1]が用いられてきました.
柳原法は医師による主観評価であり,その結果には検者によって相当の差異があります[2].
本研究では,顔面神経麻痺患者と健常者の顔表情動画像を多視点で撮影し,データベースを構築します.
図1には,共同研究先の大阪警察病院と当研究室で構築した多視点顔表情動画像撮影システムをそれぞれ示します。
構築したデータベースを用いて顔形状を解析することで定量的に麻痺度合いを評価する手法の確立を目的としています.
解析のアプローチとして顔面神経麻痺の左右非対称性に着目し,麻痺を表す特徴の検討を行いました.
この特徴は安静時から柳原法における各表情に変化した際の患側と健側の顔形状の移動量の偏りを求めることで得られます.
このときの顔形状として画像より手動で取得した特徴点を用いています.
健常者との比較を行うことで得られた特徴の有効性を示しました.
その1例を図2に示します(画像は健常者です)。
本研究は大阪警察病院の松代直樹先生との共同研究です。
図1 多視点顔表情動画像撮影システム
図2 画像処理による定量解析結果例
[1] 柳原尚明, 他, “ 顔面神経麻痺程度の判定基準に関する研究, ” 日本耳鼻咽喉科学会会報, Vol.80,No.8, pp.799-805, 1977.
[2] 松代直樹, “麻痺スコア(40 点法)の検者による差異 : 顔面神経麻痺の専門家9 人と全国の一般耳鼻咽喉科勤務医47 人での検討, ” Facial N ResJpn, Vol.29, pp.63-65, 2010
関連研究発表:
1. Takeshi Nishida, Yen-Wei Chen, Naoki Matsushiro and Kunihiro Chihara: “An Image based Quantitative Evaluation Method for Facial Paralysis,” Proc. of SEDM, Chengdu, China, pp.706-709 (2010-6).
2. 木原裕太、段桂芳、松代直樹、西田武司、陳延偉: ”顔面神経麻痺度合いの定量評価―顔表情動画像データベースの構築と顔形状解析―”, 信学技報, Vol.111, No.47, pp.87-92 (2011).